コロナショックから始める高収益企業への長期投資

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本稿では、歴史的大暴落直後あるいは真っただ中である今から、10年後に向けて投資を始める場合に、どの銘柄の期待収益率が高いのか?を計算していこうと思います。

 

考え方や計算方法の説明もありますし、調査対象は現時点で50銘柄ほどありますので、この内容が何記事に及ぶかは分かりませんが、私は今回の調査・計算がとても有意義だと思いましたので、同じように考え、納得してくれる方がいらっしゃれば嬉しいです。

 

とは言っても特別なことは何もしてないです。財務・業績を見る方なら誰でも知っているような基本に習って、愚直に計算しただけです。今更・・・と思われるかも知れませんが、ここ数年間の記憶ではそういった基本的な計算をしている記事を見ていません。「銘柄分析」と銘売った記事であっても、多くは売上、利益、キャッシュフローなど、拾ってきたデータをグラフにして載せているだけです。

 

この記事を書くきっかけは、私がコロナショックでどんどん安くなる株価に引きずられるように買い急いでしまったことです。1番底(と言われている)3月下旬にはピークから30%以上下落しましたが、私は2月下旬~3月上旬の期間に手持ち資金の大半を入れてしまいました。その頃はまだピークから10~15%程度の下落でした。ちなみに主な投入先は超高配当となったXOMとMOです。あとはMSFTやV、MCD、MMMを少しずつ買ったと思います。

 

暴落を恐れなかった、と言えば聞こえはいいのかもしれませんが、実際は思考停止。雰囲気で投資していました。「安値で買えるチャンス!」という声がたくさんありましたから。XOMは高配当に釣られてみたら原油価格大ピンチです。MOも2019年はJUULで大損失、利益マイナスになりました。

 

しかしながら、2019年の株高が続く中「今は上がり過ぎではないのか?」という声もちらほら見かけました。「リセッションはいつ頃か?」という予想も出てました。それでも、まだ割安な銘柄がないか探す動きや楽観ムードが強かった。

 

情報収集先はブログかツイッター。でも、自分でちゃんと納得して判断材料とした記事やツイートはあまり無かったかもしれないです。また、『ブログやツイッターの情報は短期視点のものばかり』ですね。注目を集めるためにはそうなってしまうのは仕方がありません。しかし、自分は10年~20年を見据えて投資をしているはずでした。

 

いい加減、雰囲気で高配当連続増配株やグロース株に投資するのは止めにしようと。投資の基本に立ち返り、自分で納得できるデータを出してみようと思ったのです。Covid-19が経済に与える影響は長引きそうなので、やるなら今のうちだぞ、と。なにせワクチンが開発されないと根本的解決にならないとのことなので。

 

1~2か月くらい投資本を読み返したり、色んな会社の財務、業績推移を集めて眺めました。その結果、以下の疑問については自分なりの答えを出せたと思います。

  • 『株価が高い安いってどういうことなの?』
  • 『会社の将来の価値って数値化できないの?』
  • 『結局PERだけでは分からない、割高でも買えるボーダーはどう決めるの?』

 

なお、冒頭で申し上げた『大暴落から10年後に向けて投資した場合の期待収益率』をテーマにしたのは、コロナショック直近の大暴落、つまりリーマンショックが約10年前の出来事だからです。リーマンショック後の2009年~2019年の財務・業績データを基に気になる会社の期待収益率を計算しました。

 

今度の歴史は繰り返すかどうかは分かりませんが、暴落が起こった今から将来のことを推定するならば、同じく暴落直後~今までのデータを使ったらいいんじゃないかと考えました。

 

前置きは以上です。では、マイクロソフトを例に期待収益率の計算を始めたいと思います。

 

 

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マイクロソフト基本データ

 

2020年4月22日終値は$173.52です。データソースは『米国会社四季報』、『yahoo! finance』、『Dividend.com』などです。

 

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業績推移

2009年以降、各年のROE(ttm), EPS(ttm), BPS(ttm), PER, 配当データは以下の通りです。

 

データ数は11年分とキリが悪いですが、『2009~2019年の10年間でEPSは約3.12倍に成長しました』と言いたい場合には都合が良いです。

なお、ROEはEPS ÷ BPSの計算結果です。証券会社やナントカfinanceみたいなサイトに載っている数字とは少し差があります。直近5年間の平均ROEは25.74%、ピックアップした11年間の平均ROEなら29.15%です。平均データはそういった見方になっています。

上の表から、過去11年よりも直近5年の方がPERが高く、市場の評価が高まってきているということが分かります。

あとは増配率が低下傾向にありますね。下のようなグラフで見た方が分かりやすいです。

マイクロソフトの配当利回りは1.18%、2009年以降の増配率は平均13.77%です。(2020年の年間配当は$2.04で増配率約8%ですが)マイクロソフトを今買って10年寝かせておけば、配当利回り4.28%に成長すると推定できます。

  • 1.18%×(1+0.1377)^10 = 4.28%

直近5年の増配率(平均10.45%)を使って推定3.18%、の方が現実的かも知れません。

配当狙いの場合は、今の配当利回りだけでなく将来の配当利回りがどうなるか?ということも判断材料になりそうです。今回のテーマからは逸れますが。

 

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会社経営と投資活動は本質的に同じこと

ROEは株主資本利益率。株主に投資してもらったお金で会社が何%の利益をあげたか?を示します。会社の成長スピードと解釈しています。

BPSが1株あたりの株主資本、EPSが1株あたりの利益ですので、

  • EPS(1株あたり利益)=BPS(1株あたり株主資本)×ROE(株主資本利益率)

という関係となります。

 

また、配当性向はEPSの何%を配当として払っているかを示します。例えば2019年だけ見るならば1株利益$5.06、配当性向37.35%ですから、$1.89($5.06×0.3735=$1.89)を配当として使い、残りの$3.17を内部留保するなり、事業のために使うということです。

つまり、会社は資本(BPS)を使って各社各年の利率(ROE)で利益(EPS)を出し、その一部を資本に加える。大きくなった資本で翌年以降はさらに大きな利益を生んでいく。言い換えると、複利で資本と利益を増やしていく。我々、株主と同じですね。投資資本を使って金融商品ごとの利率で利益を出し、複利で資本を増やしていく。単純に考えると、そういうことです。

 

過去の業績から『未来』を推定する

もう一度2009年~の業績を載せます。

過去の業績を基に未来を推定していきます。

まず、2020年のBPSを計算しますと、

  • 2020年のBPS=前年のBPS+(前年のEPS ー 配当として払った分)

なので、

  • 2020年のBPS=$13.39+($5.06ー$1.89)=$16.56

となります。次にROEですが、これはBPSのように積み上がるものでもないですし、毎年バラつきがあるものですから、過去の平均29.15%を使っていきます。

  • 2020年以降のROE → 過去データ平均29.15%とする

そうすると、EPS=BPS×ROEですから、

  • 2020年のEPS=$16.56×0.2915=$4.83

です。

・・・ありゃりゃ?前年よりEPSが小さくなっちゃっいました。でも、ROEは過去平均を使っているから仕方ないですね。毎年同じ効率で儲けられるわけじゃないから平均データを使うしかない。でも、大丈夫。BPSが積み上がっていくので、ちゃんとEPSも大きくなっていきますから。

 

あとは、2020年の配当も推定しておきます。

2009年以降の平均増配率は13.77%ですから、1足して2019年の配当と掛け算してみましょう。

  • $1.89×(1+0.1377)=$2.15

でも、残念。2020年の年間配当は$2.04で決まりっぽいですね。さすがに今年はもう1回増配発表しないでしょう。2021年以降の配当額を上記のように計算していくことにします。

なお、2020年の推定EPSは$4.83でしたから、配当性向は42.26%、増配率は7.94%ですね。

 

これで、1年先のデータが大体出揃いました。

 

10年後の期待収益率を推定する

前項の手順で2029年までの業績を計算します。

ROE, PERは2009年~の平均データを使ったので各年は空欄になってます。増配率も2021年以降は過去平均を使いました。

上の表に予想株価を追加します。

  • 株価=EPS×PER

です。

マイクロソフトは近年PERが高くなっています。利益とともに投資家からの期待が成長しているのですね。PERは過去5年平均と2009年以降の平均を使って株価を計算しました。以後もPERが高まり続けるならどちらの推定よりも期待収益率が高くなりますし、PERが低下していくなら2009年以降のPERを使って推定したデータ側に寄るということです。

 

過去5年のPERを基にすれば、2029年の株価は$721.62と推定されます。記事を書いた時点の4月22日終値は$173.52でした。割り算すれば10年間の期待収益率は約415.87%となります。年平均にすると、

  • ($721.62 ÷ $173.52)^(1/10)ー1=15.32%

となります。

一方、2009年以降のPERを基にすれば、2029年の株価は$502.72、10年間の期待収益率は289.72%となります。年平均にすると、

  • ($502.72÷$173.52)^(1/10)-1=11.22%

です。

 

なお、過去の業績を基にした推定では、2020年以降1~3年間の株価が2020年4月22日終値を下回ります。これはPERがさらに大きくなるか、儲けの効率が良くならない限りは、短期的に見て割高だということです。今の世界情勢でここから数年間、PERが高くなったりROEが向上したりするでしょうか?私にはそうは思えません。

 

ただ、10年後の未来から見れば今の株価は決して割高ではなく、年間11.22%~15.32%の利率で値上り益が期待できます。年利15%ならどうでしょうか?意外と利率低いと感じるかも知れませんね。

 

私は10年後の資産目標を達成するために、逆算して年利10%以上を目指していますので充分な数字だと感じます。今回は割愛しますが、マイクロソフトの財務は非常に堅牢ですし。

もちろん他にもっと良い利率を持ち、財務が安定している会社があればそちらに投資しますし(実際にあったので私はそちらへ投資します)、10年以内に情勢が変わるかもしれないのですが。

 

配当込みの期待収益率を推定する

配当込みの期待収益率も出しておきます。

まあ、値上り益のみを考えた時とあまり変わりません。

ちなみに、2029年の株価に配当額合計(配当なので税引してから)を足して期待収益率を計算し直しただけです。

 

冒頭の問いへの答え

  • 『株価が高い安いってどういうことなの?』
  • 『会社の将来の価値って数値化できないの?』
  • 『結局PERだけでは分からない、割高でも買えるボーダーはどう決めるの?』

私は冒頭で上記の疑問を持ったと言いました。

今回、期待収益率を推定したことでその答えが出たと思っています。

  • 株価が高い安いの判断は自分の目標に対して期待収益率がどうか?ということ
  • 会社の将来価値は過去の業績から推定できる
  • 今のPERだけでなく過去PERや業績推移から推定した期待値が目標以上なら買える

こんな感じです。

疑問に思っていたことは、本当に基本的なことでした。

 

終わりに

今回はマイクロソフトを例にして、10年後の期待収益率を計算しました。もちろん、これだけで投資判断ができるわけではないですが、1記事が長くなるので割愛します。さらっと書けば、

  • 自己資本率や当座比率(あるいは流動比率)を見ること
  • 返済期日が短い債務に対して十分な利益を稼いでいるか?
  • 売上、利益、キャッシュフローは健全(辻褄が合っていて)で安定して伸びているか?
  • 事業継続に必要な投資が大きいかどうか?
  • ワイドモート、ブランド価値を持つ事業か?

ということを見るのだと思いますが、それを次記事で書くか、あるいは次の記事は別の会社について期待収益率を計算するか迷っています。

みんな大好き優良企業が意外にも期待収益率低すぎ!だったりしますし。

 

自己資本率が極端に低い会社はROEが当てになりません。別の計算が必要だと思いますから、それも書きたいです。

 

あとは、バックテストですね。今回よりもさらに遡ると1999年-2000年のITバブル崩壊ですか。2000年~リーマンショックまでのデータを使って今回のように期待収益率を求め、2009年以降の株価推移と照らし合わせれば、推定の妥当性が分かります。時代が違うと言われると困りますが。

 

いかがでしたか?投資の基本知識を使って買いかどうか?の判断方法を書いてみましたが、『ちっ、そんなこと当たり前だっつーの』『そんな簡単じゃないんだよ』とか言われないか心配ですが、ひっそり書いてるブログなので、大丈夫でしょう。

 

とりあえず記事を投下して、様子見ますねー。万が一、いや、億が一『次も見たい!』『素敵!抱いて!』とかあればやる気がうなぎ登ると思いますので、生暖かい目でよろしこ。

 

続く

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