米国食品大手のクラフト・ハインツ(KHC)は、2月22日の決算発表を受けて株価が急落しました。

決算報告の中で、同社は減配も発表しています。1株あたりの四半期配当0.625$から0.4$と-36%もの減配です。
米国企業において減配は、該当企業が重大な危機に瀕していることを意味しますが、クラフト・ハインツは投資の神様ウォーレン・バフェット氏も主力銘柄としてポートフォリオに入れている優良株のはずでした。
多くの米国株投資家は優良株を買増し、配当を再投資し続けることで、長期に渡って資産を大きくしていくことができると信じていたはずですが、買い増し続けた株が今回のクラフト・ハインツのようになってしまえば資産は大きく減り、減った分が回復するかどうかも分かりません。
では、保有株の暴落を防ぐ術はあったのでしょうか?
そして我々の保有する株は今現在大丈夫なのでしょうか?
クラフト・ハインツ不振の兆候はあったのか?
まず、クラフト・ハインツに業績不振の兆候はあったのでしょうか?
同社の近年の売上高と営業利益を見てみます。

2017年まで売上高・営業利益共に大きく問題は無いように見えます。むしろ2014年以降回復傾向であるかのようにも見えます。
2018年の推移も見てみます。

今回の2018.10~12(Q4)決算までは安定していて全く問題ないように思えますが、いきなり赤字転落しました。
決算では、売上高やEPS(1株あたりの利益)がコンセンサス(市場予想)を上回るかどうか注目されますが、それらのみを見ていたのでは、今回の暴落を事前に察知することはできなかったのではないでしょうか。
クラフト・ハインツ キャッシュフロー推移
では、次にキャッシュフローを見てみたいと思います。

キャッシュフローは現金の出入り(流れ)を示すもので会計方針による影響を受けません。会計的にごまかしにくい指標であると言えます。
営業キャッシュフロー(営業CF)とは、商品やサービスを売ることで得た売上高から原材料費、人件費などの支出を引くことで得られる現金収支を示します。
フリーキャッシュフロー(フリーCF)とは、営業キャッシュフローから事業に使用した投資資金を引いたものです。
営業キャッシュフローマージン(営業CFマージン)とは営業キャッシュフローを売上高で割ったものです。事業でどれだけ効率よく現金を稼いだか、を表します。
営業キャッシュフローマージンが高い(15~35%あると良い)企業は効率よく儲けることができる商品やサービス、仕組みを確立しているので、安定してどんどんキャッシュを稼いでくれるというわけです。
少し戻って見てみると、クラフト・ハインツのキャッシュフローはどうでしょうか。
営業キャッシュフローマージンは減少傾向で2012年以降は15%を切っていました。同社の事業には強みが失われていた、ということではないでしょうか。
また、2017年は売上高・利益共に問題なく出ていると思えましたが、実際は事業での儲け(営業キャッシュフロー)は激減しており、フリーキャッシュフローはマイナスになっています。
つまり、キャッシュフローを追っていれば、クラフト・ハインツの不振は事前に察知できたかもしれない、ということです。
では、我々の保有株は大丈夫なのか?
自分の保有株が大丈夫かどうか。今回の例で考えるならば、各銘柄キャッシュフローを確認してみるしかありません。
例えば、私の保有株で近年特に逆風を受けてきたたばこ株を見てみましょうか。

紙巻きたばこマールボロや加熱式たばこで有名なフィリップ・モリス(PM)のキャッシュフローです。
嫌煙、健康志向、規制、訴訟と逆風を受け続けて、たばこはもうおしまいだと言われたりもしますが、まだまだたくさん現金を稼いでいて大丈夫そうです。営業キャッシュフローマージンは30%付近を推移し、たばこ事業には効率よく儲けられる強みがあると言えます。
ただ、どのような事業、企業であっても、いつその強みが失われるか分かりません。そのような時にでも暴落直撃を避けられるよう、保有銘柄のチェックを欠かさないようにしたいと思います。
続く
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