たばこ銘柄は米国株、高配当ディフェンシブ銘柄の代表格です。『株式投資の未来』著者のシーゲル氏がフィリップ・モリスの過去のリターンを示したからです。
米国ミレニアム世代を中心とした健康ブームや米FDAの規制発表などを経て、たばこ業界は紙巻きたばこから電子たばこへとシフトしようとしています。正確には電子たばこではなく加熱式たばこというみたいですが。
電子たばこというのはたばこ葉を使用しない、リキッドを熱して出てくる蒸気を吸うものを指すそうです。日本では薬事法でニコチンを含むリキッドを製造・販売できませんし、電子たばこ各社が製造するリキッドは正式にはニコチンを含みませんが、ニコチンが含まれたリキッドを個人輸入することもできます。
たばこ産業が安定した利益を得られるのはニコチンへの依存性のおかげです。ですからiQOSなど加熱式たばこと、JUULやVapeなどの電子たばこ(ニコチンが入ったリキッドを買える)は競合します。
つまり、たばこ銘柄がこれからも安定した利益を出し続けるためにはJUULやVapeに打ち勝つ必要があるこいうことです。
iQOSやgloの加熱式たばことJUULなど電子たばこの現状について調査・思考しましたので、記事にしてみます。
たばこ銘柄は高配当ディフェンシブ銘柄の代表
フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、アルトリア・グループ(MO)の2社は元々フィリップ・モリスというひとつのたばこ会社でした。2008年、健康被害に関する訴訟リスクを避けるため、米国内で商売をするアルトリア・グループと海外で商売をするフィリップ・モリス・インターナショナルへと分社化しました。
フィリップ・モリスが製造してきたマール・ボロは世界一のブランドを持つ紙巻きたばこでしょう。マール・ボロなどの紙巻きたばこを主力にフィリップ・モリスは100年以上繁栄し、利益を上げ続けてきました。
高配当ディフェンシブ銘柄への長期投資の優位性を示したジェレミー・シーゲル氏は、自著『株式投資の未来』にて1957年~2003年の期間において株主に最高のリターンをもたらした銘柄はフィリップ・モリスであると言いました。上記期間におけるフィリップ・モリスの年平均リターンは配当再投資込みで19%を超えていました。
そうなった要因としてシーゲル氏は、たばこ銘柄が長年不人気であり、苦しい状況にあり続けたこと。そして、連続増配を続けたことを挙げています。たばこ銘柄が長年不人気であったのは、健康被害に対するたばこの悪いイメージと、喫煙者からの訴訟が相次いだからです。
不人気であるがゆえに割安で株を買えたことと、株主への還元率の高さから19%を超える脅威の年平均リターンを実現できたのです。
現代では当時よりも割高であることから19%もの高リターンは望めないと思いますが、ニコチンの持つ依存性と設備投資を必要としないその業態から、たばこ産業は安定した利益を出し、株主に還元してきたので、たばこ銘柄は米国株投資家、特に高配当ディフェンシブ銘柄に投資する方々にとっては鉄板の銘柄となっています。
紙巻きたばこから加熱式たばこへのシフト
近年米国ミレニアム世代の健康志向、米FDAのニコチン規制発表を受けて、紙巻きたばこ産業を手掛けるPM、MO、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)、JTはそれぞれ加熱式たばこを開発し、シェアを伸ばしてきました。各社は紙巻きたばこの製造量を段階的に減少させ、将来的には加熱式たばこへとシフトしていくようです。各社の製造する加熱式たばこは以下の通りです。
- PM、MOはiQOS
- BTIはglo
- JTはプルーム・テック
JUULという加熱式たばこの競合相手
しかしながら、次世代のたばこにおいて圧倒的シェアを握るのは、加熱式たばこを製造する上記のどの企業でもありません。
今、世界的に爆発的な人気を誇るのは電子たばこ『JUUL』です。
(出典:yahoo!JAPANニュース)
加熱式たばこ、電子たばこのシェア推移を示しました。赤色の棒グラフ、JUULが爆発的な伸びを見せ、2017年時点で次世代たばこの約1/3のシェアを持っています。
JUULの次にブリティッシュ・アメリカン・タバコglo、アルトリア・グループiQOSと続く感じでしょうか。従来の紙巻きたばこを売ってきた企業は加熱式たばこへシフトしようとしているのに大ピンチです。
加熱式たばこは米国内で販売できない
また、米国内での商売を手掛けるアルトリア・グループに関しては米国内におけるiQOSの販売許可が未だ出ていません。米FDAがiQOSの安全性(有害性が低い)を疑問視しているからです。他の加熱式たばこについても米国内での販売は認められていませんが、アルトリア・グループのように米国内のみで商売をしているわけではありません。
iQOSは致命的な欠陥を持っている
また、iQOSはたばこユーザーから不評です。
- 連続吸いができない
- ヒートスティックの差込失敗
- 冬季間に使用できないことが多い
- 充電失敗
- お手入れ面倒
- ヒートスティックで唇を火傷することがある
- 逆にヒートスティックがぬるいことがある
など、色々使用上の不都合を持っているからです。そして、機械もヒートスティックも高い。メーカーも大きなコストをかけてiQOSを開発したのに、改良するとなると再びたくさんのお金と時間を使ってしまいます。
一方、ブリティッシュ・アメリカン・タバコのgloは機械もスティックも安く、連続吸い可能、お手入れ簡単と、サイズが大きく嵩張ることを除けばiQOSより使用感は良いです。たばこを吸った満足感が少なく、連続吸いができるので本数増えるらしいですが。
JUULは完璧に思えたが風向きが変わった
健康志向に向けた加熱式たばこですが、iQOSもgloも実は紙巻たばこよりタール多い?疑惑も出ていたり、良いのか悪いのかよく分かりません。
そしてJUULですが、従来の紙巻きたばこを吸ったような満足感があり(日本ではニコチン入りリキッドを個人輸入しなくてはなりませんが)、価格も安く、デザインもカッコいい。リキッドを熱した蒸気を吸うことからタールなし、米国内でも販売可能って・・・あれ?完璧じゃね?
と思ったら、JUULも有害物質発生させてる疑惑が浮上しました。リキッドを熱する金属部品から有害な有機金属が検出され、健康被害を生じる可能性があるそうです。
また、最近になってJUULを販売するJUUL Labsに対して、
- 未成年者の電子たばこ使用に関する訴訟
- 禁煙目的で切り替えた人からの訴訟
が相次いでいるそうです。
未成年者のJUUL使用に関する訴訟
JUULは米国の未成年者に流行している電子たばこです。煙が少なく、親や教師に見つかることが少なかったり、類似品で形が違うものがあることで子供が電子たばこを保有していることに気がつかなかったりするそうです。2016年時点ですが、米国の200万人以上の子供がJUULを愛用しており、実際にはそれ以上だと見られています。
また、JUULは紙巻きたばこ以上のニコチンを含んでいると言われており、子供達が止められなくなるとの訴えもあります。
結果、ニコチン中毒になる子供達を守るために親、学校、議員、公衆衛生機関から圧力をかけられ、米食品医薬品局(FDA)は未成年者へのJUULなど電子たばこの販売を取り締まるべく動いています。FDAは電子たばこ製造業者へ直接責任の追及も行っているそうです。
それに対してJUUL Labsは政府要人とのパイプを作ることで各方面からの追及を躱そうとしているようで、ロビー活動に力を入れているとのこと。
禁煙目的でJUULに切り替えた人からの訴訟
JUULの宣伝内容から、紙巻きたばこに比べてニコチンが少ないと認識されたようで、禁煙目的で紙巻きたばこからJUULに切り替えたのにニコチン依存症がひどくなった、騙されたと訴訟を起こす人達が現れました。訴訟を起こした人達の真意は分かりませんが、未成年者のJUUL依存の件と相まってJUUL Labsには今後辛い状況が待っているかもしれません。
終わりに
JUULについて米国内で健康被害による訴訟が起こされるようになり、海外においてもJUULの販売・輸入を禁止する国が出てきました。電子たばこが逆風にさらされるようになったことで、今後は加熱式たばこが浮上する可能性があります。
また、従来の紙巻きたばこメーカーはそれぞれの国に膨大な税金を納め続けてきたことから政府とのつながりも強く、その利益が守られる可能性もあります。
加熱式たばこの劣勢から売上が減少し、近年株価も低迷し続けていましたが、依然として高配当・連続増配は継続しています。シーゲル氏が示した黄金時代に似た状況となりつつあったのではないでしょうか。
最近ではアルトリア・グループ、フィリップ・モリスの配当は5%を超える超高配当です。これからの状況次第では再び株価が上昇する可能性を秘めていますし、それならば今が仕込み時ということになります。
ただ、未来は誰にも予測できませんので、たばこ銘柄ばかりに入れ込み過ぎないように気をつけながらも定期購入を続けたいと思います。
続く
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